Next Step
次なるステージ

あんなに気持ちよく毎日晴れてばかりいたのに、冬になると冷たい雨が多くなり、空はいつも鉛色でした。南国のタイからきたルンティップは寒い寒いとスキーウェアを家の中で着るようになり、カズはますます土の研究に没頭していった。僕は先の見えない暗いトンネルの中をただひたすら歩き続け、じっと結果を待っていた。
まずカレッジが求めるTOEFLのスコアを越えているテストの結果が届く。模擬試験も受けていたので、これは大丈夫と思っていたけれど、いざ結果が出るまではやはり心配でした。そして肝心のプログラムをエントリーしてからは、なるようになれと開き直ったり、時にやきもきしたり、何となく宙ぶらりんの日々を過ごしていたけれど、数週間後にカレッジから大きな封筒が届き、幸運にも木工プログラムを受けられることが決まったのでした。
もうとつぜん目の前が明るく広がり、目標を達成した安堵感でいっぱいになった。IELIの先生達もみんな喜んでくれた。アビーに至っては、カレッジの近くに住む友人に電話して、アパート探しのために何日か泊めてくれるように話までつけてくれた。いよいよ事態が大きく動き始めて、とにかく慌ただしくなる。

まずさっそく車の免許を取った。自転車を日本から持参したのだけれど、広大なアメリカではやはり限界があった。そしてグレイハウンドバスなどを乗り継いで、カレッジのある町フォートブラッグまで行き、苦労しながら新しい部屋を探す。一週間後にアルケータに戻り、荷物を置いて一度日本に帰り、鑿やら鉋やら持っている木工道具すべてと、制作に必要と思われるものをなんでも梱包し、いつ届くのかわからない状態ではあったけれど、新住所に発送した。カレッジ側の不手際でビザの再申請を余儀なくされ、授業が始まるまでにアメリカに戻れないんじゃないないかとイライラする日々が続いたけれど、何とかアルケータに戻り、一年間お世話になったアビーとマイケルに挨拶をして、置いていった荷物を積みこんだレンタカーで、いざフォートブラッグに向かう。そんなドタバタの末に、ついに本来の目的であった木工プログラムが、いよいよ始まろうとしていた。