IELI(International English Language Insutitute)
宿題とマラソン

大学内にある英語講座、IELI。お金さえ払えば誰でも受け入れてくれるが、実際はアメリカ留学を目指す20代の若者が世界中から集まっていて、みんなTOEFLを意識しているし、教える方もそのテストでいいスコアを取ることをひとつのゴールにしている。その内容は、書き・文法・しゃべり・読み・聞き・発音と6つに分けてそれぞれ50分の授業を行い、宿題も多くまさに英語漬けの日々

大学敷地内に建つこぢんまりとしたIELI。
家からIELIまで続く自転車で通った道。野生の鹿も軽やかに横切る。

僕のようなとりわけ勉強が出来るわけではない、はや30歳を過ぎていた男にとって、これは決して簡単な事ではないとはじめから想像していた。全部自分持ちではるばるやって来た決心もあり、出会った日本人とは、なんと日本語で話をしなかった。それがルールでした。若い彼らにしてみたら嫌な奴だったと思う。とにかく今は英語に集中しようと言い聞かせて、同居する留学生のカズとも終始英語で話をしていた。

英語の学習自体は決して楽しいものではないが、中学や高校で嫌々やらされていた感じでは全くないし、はっきりとした目的があるのでやる気の度合いが違う。ただ一見簡単なような冠詞の付け方(a, an, theなど)ひとつ取り上げてみても、これはもう外国人である限り永遠に正しく書けないな、という語学の勉強そのものを諦めてしまう部分が多々あった。
しかし、そうしたことを一方で認めながら、とにかくやれることをやろうと毎日の宿題を深夜までこなし、努めて新聞や雑誌を読み、字幕付きでテレビを観たり、たまに落ち込んだり、そんな風にしてなんとか一年近くを過ごし、そして最後に一度だけ、本番のTOEFLを受けたのでした。決められた日時の決められた場所で、コンピューターの並ぶ殺風景な部屋に案内されて、朝っぱらからモニターに向かって4時間近くも頭を絞る長い英語のテストでした。


アザミに似たカリフォルニア西海岸の花、スィストル。
花を見る心の余裕は僅かにあった。

アルケータにいる間は地元のランニングクラブに参加させてもらった。日曜日の朝から2時間ばかり隣町まで数人でゆっくりと走る。年齢層もぐんと高いおやじばかりのグループは、大学の教授か元教授だった人達で、遠くに牛が牧草を食むのんびりとした風景を眺めながら、話題は「映画」「お金」「下ネタ」とランダムに繰り返される。
5キロや10キロの小さなロードレースにクラブの人達に連れて行ってもらい、何度か大会にも参加した。ハーフも走ったし春にはフルも走った。 英語の勉強も出来るかもしれないという下心もあったけれど、正直言うと毎日が勉強ばかりで、体でも動かさないことには頭がどうかしそうだったし、なにより気分転換がしたかった。アルケータにいたときは、走ることだけが唯一の息抜きでありました。

バードサンクチュアリ、アルケータマーシュ。夕方この辺りをよく走った。
Avenue of the Giants Marathonを完走し、翌日の地元の新聞「Times Standard」のスポーツ欄に名前が掲載される。イチローより名前が大きかった!